
ぼくが越してきた街の空には、くじらが泳いでいた――。ぼくは疎開という形で、この投函森という田舎町に越してきた。 中学二年生であるぼくらの日常は、戦争が起こっていようが起こっていまいが関係ない。あるのは当たり前の事だけだ。当り前じゃないのは、空を泳ぐくじらだけ。 どこからが嘘で、どこからが本当なのかわからない夏の御伽噺。
生天目 奈央汰
主人公。投函森に疎開してきた中学二年生。 斜に構えて素直になれない年頃。「クールな男」を目指している。
鮫島 鯨
奈央汰が投函森で出会う少女。気さくで気まぐれで大雑把な性格。
生天目 鏡子
奈央汰の叔母。「おばさん」と呼ぶと怒るので、奈央汰には「鏡子さん」と呼ばれている。 酒を飲んでいる時間が一番幸せらしい。