ぼくが越してきた街の空には、
くじらが泳いでいた――。

ぼくが越してきた街の空には、くじらが泳いでいた――。世間的には、戦争というものが起こっているらしい。ぼくは疎開という形で、この投函森という田舎町に越してきた。転入して即行、新聞部に入部させられた。この街にあるのは、少年院と、軍事基地、精神病院くらい。中学二年生であるぼくらの日常は、戦争が起こっていようが起こっていまいが関係ない。あるのは当たり前の事だけだ。当り前じゃないのは、空を泳ぐくじらだけ。どこか不思議で、どこか切なく、それは遠い過去の記憶。どこからが嘘で、どこからが本当なのかわからない夏の御伽噺。