ナイショのハナシ
誰かが話す声が聞こえる。男が一人に、女が二人。
僕は瞼を開けようとしたが、深い疲労の所為か身体が思うように動かない。
「にゃ⁉ 俺、嫌だぞ⁉ にゃんで、男なんか家に泊めなきゃなんねぇんだよ⁉」
「仕方ないですよ。だって、わたしのお家に連れて帰るわけにもいきませんし……」
「そーだぞ。おめー、諦めがわりーんだよ。あたしもクーロも駄目なら、おめーのところだろーが」
暗い中で、三人の声だけが頭蓋を反響する。なんだか、ひどく気持ち悪い。乗り物に酔った時のような感覚だ。
「お前ら……女だからって調子に乗りやがって……」
「え、なんですか? 可愛い女の子ですみませーん!」
「おお、あたしも可愛いってか。いやー、照れるぜー、ぎゃはははははははははははははは!」
「いや、俺、そんなこと言ってねぇからな……」
やがて、三人の話し合いは終わったようで、僕の身体を誰かが背負う。身体は動かないが、僕は自分を背負う誰かの情報を必死に探った。
ふわり、と煙草の臭い。
微かに響く鈴の音。
漂ってくる紫煙と、ちりん、ちりん、と鳴る鈴が眠気を誘ったのか、僕の意識はまた闇に落ちて行った。