神の杞憂
いくつもの〈
ブラウン管テレビジョンの山に囲まれて、〈神〉は――ルキアは頬杖をついていた(だが、本来肘を置くであろう空間には何もない)。
逃げる一般人を誘導する〈
――〈旧日本〉の、それこそ年月で言えば何十年も昔の歌謡曲を
ルキアは人間が大好きだ。
大好きだから、こんなことをする。
過去、現在、未来の出来事を全てフィルムに刻み、それをずっと眺めている存在が〈神〉である。
自分の創った物語を、延々延々延々延々――見続けるのだ。なので、厳密に言えば彼ないし彼女が〈"ロスト・エルサレム"〉に災いをもたらすのも必然であり、当然なのである。そして、彼ないし彼女はありえないはずの期待をする。自分の創った物語が自分の創りえなかった物語へ変わる瞬間を。
「――幸せに生きても、その生に意味はあるというのか――〈
避難する一般人を見て、少し皮肉を込めて呟く。
ひらり、と、ルキアの頭上から羽根が舞い落ちてくる。
それすらもフィルムに刻まれた物語であるかのように、驚きもせず上空――天井すらも存在しない空間を見上げた。
「これから始まる物語は、奇跡であり喜劇であり悲劇。幕が開いたなら、フィナーレへ向かって一斉に始まる馬鹿騒ぎ」
演劇の台詞のように朗々と謳い上げる〈神〉。
羽根を持つ少女は、ルキアの遥か上空で同じように続けた。
「そのために、私はたくさんのシナリオを書き、伏線をはって、キャラクターを作ったのです。すべて――あの大団円のために」
そして――少女と